『これ、そこの若いの、聞いておるか ? 』
突然、どこからともなく、ご年配の男性の声がした。
「わ、私、ですか ? 」
『そうじゃ。ちーとでよいのだが、わしの話を聞いてもらえんか ? 』
辺りを見回すと、目がオレンジ色のフクロウが1羽。
「はい……」
何だかわからないまま私はそう答えて、私の目をじっと見て語り出したフクロウの声を聞きました。
フクロウの話は、お香のことでした。
お香とは
皆さんはお香というと、どんなイメージですか ? 私はお線香を1番に思い浮かべます。でも、お部屋でお香を焚くという人もいるので、お線香の匂いでは少しばかり抵抗がありますよね。お線香の匂いもキライではないですけどね。
香とは、「草根木皮」を粉末にしたものの、天然の香りのこと。
- 沈香(じんこう):東南アジアに生育していて熱すると独特な香りを出す香木
- 白檀(びゃくだん):熱帯地方にいつでもある緑の香木
- 桂皮(けいひ):カシアやニッケイなどの根や幹、枝の皮を乾燥させた香りのあるもの
- 丁子(ちょうじ):インドネシアのモルッカ群島に生えている香りのよい花の蕾
- 竜脳(りゅうのう):スマトラ島、マレー半島、ボルネオ島に生育していて香りが強い絶滅危惧種の樹
中でも “ 沈香 ” から採れる最高級のものを伽羅(きゃら)といいます。
いつからあるのか
紀元前3000年より前から海外では使われていました。
日本で「香」が用いられるようになったのは、538年(552年とも言われている)の仏教伝来の頃です。飛鳥時代の聖徳太子が生まれるより前に、さまざまな仏教儀礼とともにお香もまた、大陸から伝えられました。
しかし、日本で最も古いお香の記述は、『日本書紀』。これには「595年にひと抱えもある大きな沈水という香木が淡路島に流れ着き、島の人が香木と知らずかまどへ薪とともに入れ燃やしたら、その煙が遠くまで香り、これを不思議なこととしてこの木を朝廷に献上した」と記されています。
昔の使い方
当時から仏様用としてだけでなく、薬用や現在の香水の代わりとして、煙で着物に香りを移して使っていたようです。
宗教の儀式に使われていたお香は、平安時代になると、貴族達が生活を楽しむために用いられるようになりました。
そして室町時代の文化には、“ 香道 ”(こうどう)という、香りを当て合う上流階級のお遊びがありました。
今のお香は
現在のお香の使用目的はとても色々あります。
仏事に使うお線香や焼香、癒しなどのアロマテラピー的に使うお香、蚊取り線香のような虫除けなど様々。
そして、純粋なお香の匂いだけでなくて、アロマオイルを混ぜたり、コーヒーの香りがするものなど種類も豊富です。
本来は燃えた後の煙の残り香で楽しみむものです。
純粋なお香の香りを嗅いでみたい ! と思いませんか ? 本物はどんな香りがするのでしょうか。
純粋なお香
- 甘(あまい)
- 酸(すっぱい)
- 辛(からい)
- 苦(にがい)
- 鹹(しおからい)
塩辛いではないんですね。しかも、しおからいって匂うのかなぁ。
伽羅(きゃら)というのお香の中でも最高級品の香りは、
らしいです。うーん、想像しづらい …… 。
お香というのは、実に奥が深いものなのですねぇ。
ちなみに、伽羅は最高級なお香で、お値段は刻んだもの1gで15,000~20,000円以上するとか。
ぎょえーっ …… 。
お香の目的と種類
お線香の香りと煙は、亡くなった方へ気持ちや祈りを届けるものだという印象がありますよね。
お香にはどんな役割があるのでしょうか。
目的
お香は香りを楽しむものというイメージが強いですよね。
お香本来は、気を清め、空間を浄化する・魔除け・厄除けとしての役割を担っていました。他にも虫よけやニオイ消しの役割を担っていたとも考えられているそうです。
現在では、本来のお香の役割だけはなく、アロマオイルなどを混ぜているものも多く、アロマテラピーのようなものと同じ使い方もあります。
- 癒し
- 芳香
- 消臭
- 安眠
- 心身のバランス調整
これらの目的で女性を中心に広く用いられています。
用途は色々あるんですね。では、本来のお香と現在のお香にはどんな種類があるのか、見てみましょう。
種類
みなさんはどんなお香を知っているでしょうか。お線香やお焼香も香の1つですが、私は火をつけないスティックタイプくらいしか使ったことがないです。
しかし、実に様々な種類があります。
直接火をつけるタイプ
周りを温めて香りを出すタイプ
常温で置く・塗るタイプ
形も色々あります。
- 棒
- 渦巻き
- コーン型
- 粉
香りや目的によって、方法も違います。
使い方の違いによって、焚いて使用する香(焼香)と、焚かずに体に塗る香(塗香)に大きく分けられています。
例えば、夏に増える蚊を寄せ付けないように、蚊取り線香を焚くおうちもありますよね。蚊取り線香もお香の一種です。
中には、常温で匂うものや、香り袋に入れて持ち歩くものなど、形態は様々です。
お香は自分の部屋や家でお香を使う人が多いと思いますが、『賃貸している部屋に、もしも香りが染み付いてしまったら !? 』と心配になり使えない人もいるのではないでしょうか。
上手な使い方
借りている部屋に匂いやシミや汚れを付けてしまうと、修繕してから出るか修繕費を取られてしまいますよね。それは要らない出費な気がします。
でも、生活臭じゃなくてオシャレな香りにしたいと思う人もいますよね。
では、どうしたら良いのでしょうか。
毎日焚かない
タバコを毎日部屋で吸うと、ヤニというタバコの脂で壁や換気扇など黄黒くなるしタバコ臭くなります。もちろん退去するときは壁紙を張り替えたり、掃除したりとお金をかけないと引っ越せません。
お香も同じです。毎日焚きすぎたり、ずっと香ったままにしてしまうと染み込みます。
- 換気をする
- 週 2、3回だけ使う
目的に合わせる
自分はなぜお香を使いたいのか、明確にしてから購入し、使いましょう。
私の場合、時々深夜になっても眠れない日があります。こんな時には、“ 沈香 ” の成分が入ったお香を使いたくなります。“ 沈香 ” は癒しの効果があるので、寝る前にこの香りを嗅いでから眠りにつくと安眠できると言われているからです。
まとめ
お香はインターネットでも購入することが出来ます。インターネットで買っていざ使ってみたら「この香りは苦手だなぁ」なんてことにもなりかねません。
そうならないように、店舗を構えた専門店へ行って専門家に相談しながら自分の目的と用途に合ったお香を手に入れましょう。
『これ、そこの若いの。分かったかのぅ ? 』
『わしの話はこれで終わりじゃ。ではな。』
フクロウの声が聞こえなくなると、窓から朝の光が差し込んできました。
「不思議な夢だったなぁ。」